シニアが日本の「資産」に?
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
定年起業して良かった!
私は地方行公務員を定年退職し、行政書士や相続コンサルタントとして定年起業しました。
先日、以前の職場(長野県庁)で終日にわたって仕事をする機会がありました。自宅から県庁は離れているので、朝7時前には自宅を出てました。そして業務終了後、帰宅したのですが、夜8時近くになっていました。今回の仕事は定型的な審査だったため、終了時刻になれば帰れる業務だったのですが、かつて現役の時は残業してから帰宅していたので夜10時を過ぎるような毎日でした。(それでも帰宅してから、学習塾へ子供を迎えに行った記憶があります(笑))
今回の県庁での仕事は月1回のペースで、毎日通勤するわけではないので我慢できますが、毎日だったら通勤だけでも大変です。・・・と今は思います。そして仕事も1日中、書類のチェックを行うような業務で慣れていないため大変疲れました。
今、毎日通勤して、その業務を毎日行うのは「ちょっとやれないな」と痛感しました。業務を行っている部屋の隣の部屋に、同期に入庁した方が再雇用で勤務しているのを発見。月一で業務があるので、今後情報交換(呑むということですが(笑))しようということになりました。
再雇用せず定年起業を選択したことに、今も迷いを持ってはいました。しかし、たった1日ではありますが以前の職場で仕事をしてみて、「やはり定年起業を選択して良かった」と心から思いました。
今後も月イチで県庁での業務がありますので、その都度「定年起業を選択して良かった」と感じてみたいと思っています。とかく今の立ち位置がよく分からなくなることがありますので、月イチで確認することは大切なことかもしれません。
さて、2023年4月7日付け日本経済新聞「人生100年こわくない・資産活用で笑おう(野尻哲史)」【日経ヴェリタス2023年4月9日号】で、我々シニアが嬉しくなるような記事が掲載されていましたので「シニアが日本の資産になる」というテーマで考えていきたいと思います。
60代、70代が日本を救う”資産”になるかも!
野尻哲史さんが地方自治体の人と60代の地方都市移住の可能性について話をしたときに、60代よりは「子どものいる若い世代が来てほしい」と反論されてしまったそうです。
確かに60代はあと10〜20年もすると介護などの負担が増えますので、移住によって人口が増えても自治体には負担も増え、近い将来の”負債”になるとみているのでしょう。
しかし、野尻さんは、違った目線を持つと60代、70代こそが、その地域の経済、ひいては日本経済を救う”資産”になるのではないかと考えているというのです。いったいどういうことなのでしょうか。
ここで、改めて日本の超高齢社会について確認をしておきますと、日本の高齢化率、すなわち全人口に占める65歳以上の人口比率はすでに28%を超え、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2065年に40%に近づくとされています。
問題はその背景です。2015年の国勢調査の結果をもとにこの推計は行われていますが、その時の人口は0〜14歳が1595万人、15〜64歳が7728万人、65歳以上が3387万人です。
それが2065年にはそれぞれ898万人、4529万人、3381万人に変わるとしています。注目すべきは65歳以上人口が横ばいで、総人口、なかでも労働人口といわれる15〜64歳が3000万人以上も減少することだとされています。
過去50年間の高齢化の問題は、現役世代の人口が変わらないなかでの高齢者の増加で、いわば「現役世代の負担増」という課題だけでした。
しかし、これからは高齢者の人口が変わらないなかで現役世代が大幅に減ることで、日本経済そのものの活力が失われかねない懸念も有してます。すなわち、単純に現役世代の負担が増えるだけでなく、日本経済の活力をどう維持・拡大させられるかといった、大きな課題も抱えながらの高齢化進行となるのです。
2000兆円がもたらす活力
そこで考えたいのが、今後50年間にわたって人口が減らないと推計されている高齢者のチカラだと野尻さんは述べています。
それでは、まず高齢者の持つチカラの源泉、「資産」の規模をみてみましょう。
国民経済計算をもとに個人の保有する金融資産と個人が保有する土地や非金融資産を合わせた「個人資産」を計算すると、2020年で3073兆円に達します。
そのうち60代以上が保有する比率を、全国家計構造調査(2019年)から推計してみると、60代以上が個人金融資産の63.5%を、住宅・宅地の58.4%を保有していました。
ここから考えられることは、高齢者は日本の個人資産の3分の2程度を保有しているとみられ、その総額は2000兆円の規模になると想定されます。
ここにきて「人生100年時代」という言葉が注目され、多くの高齢者が資産寿命の延伸を考えるようになっていますから、高齢者はこれまで以上に資産を「できるだけ使わないで生活しよう」と心掛けているのではないかと考えられます。
最近の週刊誌などのメディア露出は、「どのように老後資金を生み出すか?守るか?」という点に力点が置かれているような気がします。週刊現代や週刊ポストなどもかつては40~50歳代のビジネスマン向けの特集が多かったように思いますが、今は50代後半から70歳代の興味あるテーマにシフトしてきている気がします。(その年代のマーケットの人口が多いのですから当たり前かもしれませんが。)
どのメディア露出もセンセーショナルなタイトルで老後不安をあおるような特集をしていることが多いような気がします。(センセーショナルなタイトルの方がより売れるのでしょうから仕方ない気もしますが。)
こうしたメディア露出で「老後への不安」を植え付けられた結果、毎年推計で40兆〜50兆円規模の資産が相続されることになっています。毎年日本の名目国内総生産(GDP)の1割に近い規模の資産が相続されていますが、その多くは、「90代の親世代から60代の子世代へ」といった老々相続となっていることにも注意が必要です。
少し古い財務省のデータですが、子どもの年齢が50歳以上と想定される80歳以上の被相続人(亡くなった方)の比率は1989年で38.9%だったものが、2013年には68.3%にまで高まってきています。
そのうち90歳以上の被相続人は23.7%でした。すなわち、相続税の申告者ベースでみると、亡くなった方の3分の2は80歳以上でその相続人は50代以上ということになります。その後の寿命の延伸を考えれば、現在はさらに老々相続の比率が高くなっていることだと考えられます。
この40兆〜50兆円の多くが、老々相続となっていることで、受け取った相続人もその資産を自身の老後の資産として「できるだけ使わない」ようにしようと思うことでしょう。
すなわち相続をしても、その資産は常に老後の費用として位置づけられて、なかなか消費に漏出してこない事態が想定されます。
資産活用で笑おう!
そこで大切なのが、長い老後に備えて資産を「できるだけ使わないようにする」という発想ではなく、資産を「使いながら運用する」ことで資産寿命を延ばすという新しい考え方だと野尻さんは記しています。
たとえば、保有している資産のうち有価証券の部分は退職しても一気に現金化しないで、運用を継続しながら少しずつ取り崩していきます。
退職後も長期間の運用を継続することで、保有する資産の潜在的なチカラは大きくなり、取り崩してもその減り方は運用しないよりも緩やかになるようにコントロールできるといいます。
そして、このような効用が広く理解されるようになれば、高齢者がもう少し「資産を使っても大丈夫」ということに目を向けるようになるのではないかと提案しています。
先ほどの60歳以上が保有する2000兆円の資産のわずか0.25%にしか過ぎない5兆円は、名目GDPの1%に相当します。これが消費に漏出すれば、乗数効果も含めて大きな経済効果が期待できるはずです。
保有する資産のわずか0.25%、相続市場の1割程度の規模ですから、それが消費に回っても高齢者の相続や安心感にそれほど大きなマイナスにはならないはずで、高齢者の消費の覚醒が日本経済を助けることにつながるはずだと野尻さんは指摘しています。
老々相続額を少し減らして消費に回すという方法の他に、高齢者の資産のチカラを活用するもう1つの方法に「贈与による世代を超えた資産の移転」が挙げられます。80代以上の方の資産を、50代以上の子世代ではなく、20代といった子の子(自身のの孫)の世代へと移すことで、消費の底上げにつなげる発想です。
ちなみに一橋大学の北村行伸名誉教授によると(季刊個人金融2019年春号)、相続市場の規模50兆円に対して生前贈与は30兆円と推計しています。今後この拡大が想定されますが、ただ、ここにも課題が残ります。
それは、相続も贈与も、資産を送り出す側である現在の高齢世帯が地方に居住していて、その資金を受け取る子世代(50〜60代)と孫世代(20〜30代)は都会で生活していることが往々にして多いことです。そのために相続・贈与による資金の「田舎から都会へ」の流れが止まらない構図となります。
60代の地方都市移住
それをいくらかでも改善する方法は、相続や退職金を受け取る60代が地方都市へ移住することではないかと野尻さんは考えています。
資産を持った60代が地方に移住し、そこで「使いながら運用する」考え方を実践できれば地元の消費にも貢献できるはずですし、そのことは地方に需要を生み出し、現役世代の就労のチャンスの増加にもつながることが期待されます。
野尻さんは最後に、地方自治体が「若い世代の移住」を求めているのであれば、まずその地域に需要をもたらす「60代の資産のチカラ」を受け入れる施策が必要になると指摘しています。
田舎から都会への資金流失には遺贈寄付も有効?
上でも述べている「相続・贈与による資金の「田舎から都会へ」の流れ」の解消方法のひとつとして、当職が提案している遺贈寄付(とくにふるさと遺贈)があるのではないかと思います。
資産を送り出す側である地方居住の高齢世帯に相続が発生した場合、その遺産の一部を居住した地域の自治体や団体などに寄付(こうした寄付を遺贈寄付といいます)することで、「田舎から都会へ流れる資金の一部」を地方に残すことが出来ます。
「遺贈寄付」の詳細はコチラをご覧ください↓
私の個人的な意見としても、「相続・贈与による資金の「田舎から都会へ」の流れ」を少しでも食い止めるために、地方の自治体は「遺贈寄付(ふるさと遺贈)」を推奨すべきと考えています。
「できるだけ使わないで生活しよう」と考えない
そしてもうひとつ、私からの提案です。このブログの前半で書いていますが、「人生100年時代」といわれ、多くの高齢者が資産寿命の延伸を考えるようになっています。そのため、「90代の親世代から60代の子世代へ」といった老々相続で遺産を得た高齢者(子世代ではなりますが)は「資産をできるだけ使わないで生活しよう」と心掛けるようになるハズです。
しかし、私が以前からブログに書いていますが、「老後の幸せな生き方とは、財産をあまり残さないで生涯を終えること」であり、「人生の最期までにお金を使い切る」という考えが大事ではないかと思います。
そのうえで、残った遺産の一部を「遺贈寄付(ふるさと遺贈」にも回すといった終活の準備ができれば、後悔のない人生を過ごすことが出来るかもしれません。
私自身、同居する二女に「財産をあまり残さないで生涯を終える」、「人生の最期までになるべくお金を使い切る」と伝えていますが、彼女曰く「財産、残してくれて全然良いよ~。それほど全部使っちゃわなくても良いよ~」だそうです(笑)
「人生100年時代」認知症対策も必須に!
自分がいつ死ぬかについては、自分も含めて誰にもわからないですが、その時はいずれ必ずやってきます。また、人生の終盤で認知症となり、判断能力が失われてします可能性もあります。
そうした時のために、やはり生前の相続対策は必須となります。具体的には、認知症対策に有効な「家族信託」や「遺言書」、「任意後見」「生前贈与」などなど、さまざまな手法が考えられますが、人それぞれによって最適な対策が異なりますので、専門家の関与も必要になってきます。
ディアパートナー行政書士事務所では、家族信託に限らず、遺言書作成や任意後見契約など生前の相続対策のご相談を承っておりますので、相続対策全般についてお気軽にご相談ください。
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