【実践記】株主議決権行使をスマホでやってみた!
ディアパートナー行政書士/FP事務所 代表の瀧澤です。
新型コロナウイルスの感染拡大が拡がる中、多くの上場企業の株主総会の開催時期が近づいてきました。
日本の上場企業の決算は3月期が多いため、株主総会は6月下旬に開催されることが多くなっています。
流通大手のイオン株式会社は決算期が2月期のため、5月26日に開催される予定です。
今期のイオンの株主総会は、
1)会場での出席(リアル出席)
定員50名で事前登録が必要、定員を超えた場合は抽選となる。
2)インターネットによる出席(オンライン出席)
事前登録が必要、質問や議決権行使を行うことができる。
3)書面またはインターネットによる事前の議決権行使/株主総会のライブ中継(視聴のみ)
株主総会のライブ中継(視聴のみ)は、事前登録不要で視聴できる。
という3つの参加方法があります。
下の表は、2020年に経済産業省が、インターネット経由で株主総会当日に議決権行使などができるように、企業向けの運用指針をまとめた「ハイブリット型バーチャル株主総会の実施ガイド(経済産業省)」です。https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/shin_sokai_process/pdf/003_04_00.pdf
今回のイオン株主総会は、「ハイブリット型バーチャル株主総会の出席型」に位置付けられます。「ハイブリット型バーチャル株主総会の出席型」の定義は、実施ガイドによれば、リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の場所に在所しない株主が、インターネット等の手段を用いて、株主総会に会社法上の「出席」をすることができる株主総会をいいます。
経済産業省では、2019年度に、一部企業による総会の中継にとどまっていた株主総会を、ネットを活用して当日の議論を聞いてから議案への賛否を決められる総会を普及させ、株主による経営陣への質問や対話を増やし、総会を活性化させる狙いで、この指針をまとめ始めたようです。
元々、日本ではネット経由での出席について運営ルールが定まっておらず、総会運営をめぐるトラブルを避けたい企業側が導入を見送っているという経過がありました。経済産業省がこうした指針をまとめれば、それに沿った総会運営によりトラブルが起きる恐れを低減できるという意図があったようです。
ところが、2020年初めに「新型コロナウイルス感染拡大」という想定外の事態が起こり、人との接触機会を極力減らすという必要性に迫られて、一気に「ハイブリット型バーチャル株主総会」が注目されてきました。前期の株主総会でも、バーチャルを利用した株主総会が行われた企業も多かったと思いますが、今期はもっと導入する企業が増えてくるのではないでしょうか。
イオンにおいても、当日の出席についての「事前登録制の導入」など、例年とは異なる対応をしています。
「ハイブリット型バーチャル株主総会」の「参加型」と「出席型」の違いですが、以下のようなイメージになります。
「参加型」では、株主総会(会議体)はリアルのみで、バーチャル参加の株主はインターネットによる視聴のみとなります。また、「出席型」では、リアル参加とインターネットによるバーチャル参加のいずれも株主総会(会議体)に参加することができます。
ハイブリッド出席型バーチャル株主総会のメリットとして
①遠方株主の出席機会の拡大
② 複数の株主総会に出席することが容易になる(株主総会の集中日にも複数の総会に参加できます)
③ 株主総会での質疑等を踏まえた議決権の行使が可能となる
④質問の形態が広がることにより、株主総会における議論(対話)が深まる
⑤ 個人株主の議決権行使の活性化につながる可能性がある
⑥ 株主総会運営に係る透明性の向上につながる
⑦ 出席方法の多様化による株主重視の姿勢をアピールできる
⑧ 情報開示の充実 が挙げられます。
経済産業省がまとめた「ハイブリット型バーチャル株主総会の実施ガイド」では、総会時のお土産の取扱いについても考察されていて、以下のように記述されています。
リアル株主総会に物理的に出席する株主に配付されるお土産については、交通費をかけて会場まで足を運び来場したことへのお礼と考えられることから、会場へ足を運ぶことなくインターネット等の手段を用いて出席した株主に対してお土産を配らないとしても、不公平ではないと考えられる。【ハイブリット型バーチャル株主総会の実施ガイド(経済産業省)】
私のような地方在住者にとっては株主総会に出席するには旅費がかかっていますため、総会時の「お土産配布」や「飲食サービス」は何とも不公平と感じていましたので、なんかスッキリしましたね。 ⇒ あと、地方在住者の不満としては、株主優待において、「地方に存在しない店舗での利用券」などは使い道がないと思っていましたが、最近はネット転売という可能性も高まりましたので、それほどの不公平感は感じなくなりましたでしょうか。
前置きが長くなってしまいましたが、今回、イオン株式会社の定時株主総会の「インターネットによる事前の議決権行使」をスマホで行ってみました。
私も上の漫画のように、「面倒」、「自分が行使しなくても」と考えて、議決権を行使したことはありませんでした。(株主優待の応募はがきは見逃さず投函していましたが)
インターネットによる(事前)議決権行使という方法が最近増えていましたが、コードやパスワードの入力が煩わしくてトライすることはありませんでした。
まさにこんな感じでしたね~(笑)
ところが今回、QRコードを読み取ることで、「議決権行使コード」や「パスワード」を入力せずに議決権行使ができるようになっていました。(QRコードを読み取ることで、株主個人を認識していました。)
具体的な流れは以下ステップ1~4のように進めます。(ステップ2で、すでに株主個人の株主番号と氏名が認識されています)
これだけの作業ですので、QRコードさえ読み取ればあとはスムーズです。
実際、下のマンガのごとくに「意外と簡単」、「これでできちゃうんだ」という感じです。
また、企業側としても、「議決権行使書(ハガキ)」による回答よりもスムーズで事務経費も削減できると考えられます。
そして、イオン株式会社では、スマートフォンでの議決権行使の後に表示されるアンケートを行った人の中からイオン商品券3,000円分を100名にプレゼントするという特典がついています。
特典はほかにもあり、議決権行使したすべての株主に対して、イオンスタイル等で任意の1日限り利用可能な割引パスポートが6月中旬に発送されます。
イオンの株主名簿管理人である三井住友信託銀行主催の「スマート行使」プレゼント企画も同時に行われており、議決権行使後のアンケート実施により、抽選で応募者100人につき1人の割合で、QUOカード500円分がプレゼントされます。
「スマート行使Ⓡ」とは、スマートフォンやタブレット端末で指定のQRコードを読み取ることで、簡単に議決権を行使できるサービスのことで、Ⓡがついていますので商標登録されています。
このシステム、よくできていて、アンケートに回答したかどうかを照会できるようになっていて、何時回答したが表示されます。
企業側や株主名簿管理人側においても、「個人株主の議決権行使の活性化」を意図して、このようなインセンティブを与えているものと考えられます。これだけ簡単ですと議決権行使の活性化につながるのではないでしょうか。
5月5日付けの日本経済新聞によりますと、みずほ信託銀行では、2018年から株主総会の議決権を事前行使できるシステムを導入し、今年3月までに約220社が採用したそうです。上場企業の株主名簿を管理し、株主総会の円滑な実施を支援する信託銀行にとっても集計の負担が減らせるようです。
また、「株主優待申込み」や「従業員のストックオプション(新株予約権)行使」をスマホで完結できるよう機能を増やし、利便性の向上と企業の業務効率化を支援していく(みずほ信託銀行)ということです。
これからも「インターネットを利用した株主総会の開催」や「スマート行使」を導入する上場企業が増えていきそうですし、「株主優待申込み」でもインターネットを活用できる場面が増えそうです。
私たち株主も、企業側の意図を汲み取り、こうしたインターネット活用に慣れ親しんでいく必要がありそうですね。