「FIRE」という生き方、「副業・兼業」という選択

 ディアパートナー行政書士/FP事務所 代表の瀧澤です。

 最近、日本でもよく見たり聞いたりするようになった「FIRE(経済的自立と早期退職)」、「FIREムーブメント」。英語で「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとってFIREといわれているようです。経済的な安定を早期に確立し、早期リタイアを実現しようという取り組みを表しています。

 標準的な引退年齢(日本であれば60歳~65歳といったところでしょうか)より早くリタイア生活に入ることは、多くの人が抱くあこがれではありますが、FIREムーブメントでは40歳代あるいは50歳代前半での早期リタイアを目指すことが多いようです。

リクルートスタイル調査(日本経済新聞)

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 早期リタイアするためには、当然ながら経済的基盤が必要になります。ですが、「FIRE」(経済的自立と早期退職)は、単に「お金をいっぱい貯めて早く仕事を辞める」というものではないようです。

 これまでも早期にサラリーマンを「卒業」する人はいましたが、そのイメージは、「宝くじに高額当選した」とか「思いがけずに遺産を受けた」など、億を超えるようなかなり巨額の資産を手にしてからの引退といった感じでした。

 なので、リタイア後の生活も「悠々自適」で「経済的生活のレベルが上がる」ような生活のイメージを持っていたと思います。

 しかし、「FIRE」はそうしたイメージではないようなのです。

 「FIRE」も、リタイア後、主に投資などの資産運用によって生活していくことはこれまでの早期退職と同様のようですが、これまでと異なるのは、比較的少ない資産でリタイアする点です。

 FIRE発祥の地とも言える米国では、FIRE開始時の資産額を「年間支出の25倍」とすることが指標になっているそうです。これは「今の年収の25倍」ではなく、ギリギリ生活できるレベルに節約しての「年間支出の25倍」と考えることが多いようです。

 支出額については、やはり米国発の「4%ルール」という指標があるようです。生活費が投資元本の4%以内ならば、資産を減らさずに生活できるという考え方に基づいていますが、例えば5,000万円があって年4%の収益(つまり年200万円)を毎年確保すれば、資金は減らさずに年収200万円の生活を送れることになります。

 このルールに則れば、生活費さえ極限まで切り詰めれば、数千万円といった比較的、現実的な貯蓄額の段階でリタイアできるということなのです。働きながら貯金をする段階でも節約は必要なため、リタイヤ後もこの節約生活を続ければ持続的に生活維持が可能なのです。

 しかも、こうした節約生活(身の丈に合った経済サイズでの生活)を苦にせず過ごしながら、精神的には、仕事に追われる生活から脱出したため、非常に心豊かな生活をしているというのです。

 たしかに、現在の若者は、上の世代のような贅沢志向や物欲を持たない傾向が強いといわれています。

 経済的には最低限のコンパクトな生活を続けることを前提に、自らが形成した資産を元に、重圧を感じるサラリーマン生活を早期にリタイアする「FIRE」は、今の若者を象徴する生き方の一つなのかもしれません。

 一方、「働き方改革」で最近注目されている「副業・兼業」についての企業側(人事担当者)の考え方です。

 以下は、株式会社マイナビ(東京都)が、2020年1~7月に中途採用業務を行った企業の人事担当者を対象に実施した「働き方、副業・兼業に関するレポート(2020年)」の調査結果です。 

1)昨年前期に中途採用した企業のうち、「副業・兼業」を認めている企業は約5割にのぼる。

 現在、副業・兼業を認めている企業は全体で49.6%、将来的に認める・拡充する予定の企業は計57.0%。業種別では、医療・福祉・介護が他業種に比べ、現在認められている割合が最も高い(57.2%)。

2)副業導入企業は社員の「スキルアップ」「モチベーション維持」等に対してポジティブな印象を持つ企業が多かった。

 副業を認めている企業は副業に対して「社員のスキルアップにつながる」「社員のモチベーションを維持できる」等ポジティブな印象を持つ企業が多い。一方、副業を認めていない会社は「社員の労働時間が過剰になり本業に影響が出る可能性がある」という印象が強かった(副業認可企業:35.1%、副業不認可企業:53.3%)。

働き方、副業・兼業に関するレポート(2020年)/マイナビ

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3)副業や兼業の導入理由は「社員の収入を補填するため」が最も多く、4割を超えた。

 副業や兼業を導入している企業の導入理由で最も多いのは「社員の収入を補填するため(43.4%)」。次に「社員のモチベーションを上げるため(37.5%)」、「社員にスキルアップしてもらうため(33.8%)」など。【図3】

働き方、副業・兼業に関するレポート(2020年)/マイナビ

4)副業・兼業を認めていると答えた企業は、認めていない企業に比べて中途採用者に対する満足度が高い。

 副業を認めている企業の方が、認めていない企業よりも中途採用の内定者に対して「質・量ともに満足」の割合が4.7ポイント高い。株式会社マイナビの他調査で、求職者の6割以上が「副業可能」の求人に対して応募意欲が上がるという結果も出ており、副業可能な企業には優秀な人材が集まりやすく、結果的に企業の採用満足度も高まると考えられる。

5)緊急事態宣言を境に、「在宅勤務・リモートワーク導入」は13.7ポイント増、「時短・時差勤務導入」は3.4ポイント増

 緊急事態宣言を境に新たに導入した企業の取り組みとして、「在宅勤務・リモートワーク」(13.7ポイント増)、「時短・時差勤務」(3.4ポイント増)が増加。「在宅勤務・リモートワーク」導入割合を業種別にみると、マスコミ・広告・デザイン(71.8%)が特に高く、IT・通信・インターネット(56.0%)、金融・保険・コンサルティング(54.5%)と続いた。

 リクルートスタイルの2020年6月調査(上部円グラフ)によると、20~40歳代の会社員552人に「何歳くらいまで働きたいか」を尋ねたところ、50歳までの退職希望が計24.8%で、65歳(23.7%)や60歳(18.1%)を上回りました。

 働き盛りでの早期リタイアを望む声がある一方、具体的な目的があって辞めたいという回答は少なかったということです。

 この調査を委託した会社担当者は、「コロナ禍で投資などでの資産形成の意識が広がっている」と、定年に縛られない労働観への関心の高まりを指摘しました。

 たしかに、コロナ禍での「証券口座開設数の増加」や「世界的な株式市場の活況」などは、それを象徴するものかもしれませんね。

 「FIRE(経済的自立と早期退職)」、「副業・兼業」、その他にも多くの経済的生活の手法がありますが、アフターコロナを見据えて、今後、どのような経済的生活(当然、精神的な生活とのバランスは非常に重要なことですが、)を送っていくかは、どの世代であっても、じっくりと考えていく必要がありそうです。

 自分にとって、精神的にも、経済的にも、満足のいく生活が送れるよう、何歳からであろうと深く追求していきましょう!

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