「第3号被保険者制度」の見直しはあるのか?

みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。

新年度に入ったと思ったら、早、ゴールデンウィークを迎えようとしています。年齢を経るにつれて、月日が経つのが早く感じるのは私だけでしょうか。

令和5年4月10日付日本経済新聞電子版に「第3号被保険者制度」についてのとても気になる小さな記事が掲載されていました。「年収の壁」改革に関するものなのですが、今回は、第3号被保険者制度の見直しについて考えてみましょう。

そもそも第3号被保険者って?

これから考察しようとしている「国民年金の第3号被保険者」とは、いったいどのような人を指すのでしょうか。

被保険者には、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者とありますが、それぞれ見ていきましょう。(日本年金機構のホームページからの引用)

第1号被保険者

現在、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、すべて国民年金に加入し、将来、老齢基礎年金を受けます。

国民年金では加入者を3種類に分けています。そのうち、20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人など、第2号被保険者、第3号被保険者でない人が第1号被保険者となります。

国民年金の保険料は本人または保険料連帯納付義務者である世帯主・配偶者のいずれかが納めます。

また、(1)日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の厚生年金、共済年金などの老齢年金を受けられる人、(2)20歳以上65歳未満で海外に住んでいる日本人 、(3)日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人、(4)65歳以上70歳未満の人(ただし、昭和40(1965)年4月1日以前生まれで、老齢基礎年金を受けるための受給資格期間を満たせない人に限ります。)が、希望して国民年金に任意加入する場合も第1号被保険者と同様の取扱いとなります。

ただし、国民年金の保険料を支払う期間について、厚生労働省は現在の40年間(20歳以上60歳未満)から5年延長し、64歳までの45年間とする方向で本格的な検討に入っています。

第2号被保険者

国民年金の加入者のうち、民間会社員や公務員など厚生年金、共済の加入者を第2号被保険者といいます。この人たちは、厚生年金や共済の加入者であると同時に、国民年金の加入者にもなります。

加入する制度からまとめて国民年金に拠出金が支払われますので、厚生年金や共済の保険料以外に保険料を負担する必要はありません。

なお、65歳以上の被保険者、または共済組合の組合員で、老齢基礎・厚生年金、退職共済年金などの受給権がある人は第2号被保険者とはなりません。

第3号被保険者

国民年金の加入者のうち、厚生年金、共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収が130万円未満の人)を第3号被保険者といいます。

保険料は、配偶者が加入している厚生年金や共済組合が一括して負担しますので、個別に納める必要はありませんが、第3号被保険者に該当する場合は、事業主に届け出る必要があります。

では、年収の壁って?

岸田首相は2023年2月1日、「年収の壁」問題の解消に向けて制度を見直す考えを示しました。

パートの主婦など短時間労働者が、一定以上の水準を超えて労働時間を増やすと、社会保険制度上あるいは所得税制上の扶養者の扱いから外れ、手取りの収入が減ってしまいます。それを避けるために勤務時間を調整することで人手不足問題を深刻化させ、女性の活躍も妨げてしまう、といった問題が「年収の壁」と呼ばれています。

主な年収の壁には、(1)所得税が発生する103万円、(2)一定条件を満たすと厚生年金や健康保険に加入して新たに社会保険料が発生する106万円及び130万円、(3)配偶者特別控除が減り始める150万円などがあるといわれています。

これらのうち、特に手取り収入への影響が大きいのが、106万円と130万円の「社会保険料の壁」です。

「年収の壁」見直しの本丸は?

首相の発言以降、この「年収の壁」の議論が盛り上がりを見せています。

足元では政府が検討する保険料の肩代わり支援に注目が集まっていますが、見直しの本丸は、かねてから優遇が批判される「第3号被保険者制度」の見直しです。

「年金制度の見直し」とはやや遠い「少子化対策」の文脈で巡ってきた改革の機会ですが、どういった成り行きをみせるのでしょうか。

2023年3月初旬から中旬、厚生労働省の担当幹部らが首相官邸に何度も足を運んでいます。これは、年収の壁を巡る現状と対応について協議するためのものでした。

同じ頃、国会では配偶者に扶養されているパート労働者、いわゆる第3被保険者の保険料を、国が実質的に肩代わりする支援策について議論が交わされています。

「自分で保険料を払っている単身世帯(第1号被保険者・第2号被保険者)との公平性が保てない」。厚生労働者幹部らの懸念をよそに、今年3月末にまとまった少子化対策のたたき台には支援策が盛り込まれています。

あまり注目されていませんが、そのすぐ後ろには「さらに制度の見直しに取り組む」と踏み込んだ記載がなされています。肩代わりではなく、壁そのものを無くしていく見直しなどが念頭にあるとされています。

パートなどの配偶者の収入が増えると社会保険料の支払いが発生し、手取りが減るのが「年収の壁」ですが、本質的な問題として、配偶者の扶養に入っていれば保険料を払わずに厚い保障を受けられる第3号被保険者制度そのものにあるともいえます。

単身の非正規労働者らは、従業員100人以下の企業で年収130万円を超え、労働時間が週30時間に満たない場合は、国民年金や国民健康保険の保険料を自ら納めなければならないのが、現在の仕組みです。この人たちは第1号被保険者に該当します。

国民年金や国民健康保険の保険料は、厚生年金や健康保険と異なり会社側の拠出がないため、その負担は重くなっています。国が何らかの第3号被保険者への支援策を行なうこととなれば、自ら保険料を納めるそうした第1号被保険者との公平性を著しく欠くこととなります。

これまで国は何も議論してこなかったわけではありません。

2000年に設置した「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金のあり方に関する検討会」と当時の社会保障審議会では、第3号被保険者に保険料負担を求めたり、負担を求めない代わりに基礎年金を減らしたりする案が示されましたが、結論には至りませんでした。

2011年にまとまった「税と社会保障の一体改革」の成案にも見直しが盛り込まれましたが、制度改正は見送られ、現在に至っています。

「第3号被保険者制度」見直しの行方は?

何度かあった改革の機会を生かせなかった結果、第3号被保険者の就労調整は今も続き、その人手不足は深刻なものとなっています。

政府内には、カナダや英国を参考に抜本的にこうした仕組みを改めるべきだという意見もあります。もし実現したとすれば、1986年に今の被保険者区分ができて以来の大改革となります。

今回の「第3号被保険者制度の見直し」は「次元の異なる少子化対策」ではありますが、意外なところから成果が生まれ、「瓢箪から駒」のような大改革につながるかもしれません。

岸田首相が今回、長年指摘されてきたこの「年収の壁」問題への対応を進める考えを示したことは評価できますが、その制度の見直しは簡単ではないことは想像に難くないでしょう。

まとめ

以前から議論のあった「自分で保険料を払っている単身世帯との公平性が保てない」といった課題ですが、今年3月末にまとまった少子化対策のたたき台には支援策が盛り込まれています。

その支援策とは、配偶者に扶養されているパート労働者、いわゆる第3被保険者の保険料を、国が実質的に肩代わりするといった方法での議論がなされています。

「少子化対策」を推進するための策として、長年課題とされてきた「第3号被保険者制度の見直し」につながるのでしょうか。

この見直しには多くの議論を呼ぶことになりそうです。今後の行方を見守りたいと思います。

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