「成年年齢」引き下げで変わること
みなさん、こんにちは!「家族信託」や「遺言書」、「任意後見」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
今回は、日本FP協会「FPいまどきウォッチング」に成年年齢の引き下げによる影響についての記事が掲載されていましたので、それに関して投稿していきます。(いまどきウォッチング 2022年2月24日)
民法改正により、2022年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。成年年齢が引き下げられることで、どのような影響があるのでしょうか。また、子どもを持つ親は、どのような対応が求められるのでしょうか。
約140年ぶりに「成年」の定義が見直される
日本での成年年齢は、明治時代から約140年、20歳と定められていました。しかし、2018年6月13日に成年年齢など「民法の一部を改正する法律」が成立したことにより、成年年齢が20歳から18歳に変わることになったのです。
この改正によって、2022年4月1日時点で18歳、19歳に達している人は、その時点で新成人となりますし、2004年4月2日以降に生まれた人の場合は、18歳の誕生日を迎えた時点で新成人となります。
そのため、高校3年生の教室に成人と未成年が混在することになるのです。今年の高校3年生の教室内は、ちょっと混乱するかもしれませんね!
成年年齢引き下げの背景は?
民法の成年年齢が引き下げられた背景には、近年、公職選挙法の選挙権年齢を18歳と定めるなど、18歳、19歳も国政の重要な判断に参加する政策が進められてきたことがあります。
法務省のウェブサイトにある「民法(成年年齢関係)改正Q&A」では、「市民生活に関する基本法である民法においても、18歳以上の人を大人として取り扱うのが適当ではないかという議論がされるようになりました。世界的にみても、成年年齢を18歳とするのが主流のようです。
成年年齢を18歳に引き下げることは、18歳、19歳の若者の自己決定権を尊重するものであり、その積極的な社会参加を促すことになると考えられます」と説明されています。
ちなみに、法務省のウェブサイトにある「民法の成年年齢が20歳と定められた理由等」によると、1876年(明治9年)に「自今満弐拾年ヲ以テ丁年ト相定候」という太政官布告が出されたことによって、満20歳が成年年齢と定められたそうです。その後、1896年(明治29年)に制定された民法で「満二十年ヲ以テ成年トス」とされ、今日に至るといいます。
成年年齢が20歳と定められた理由については、「必ずしも明らかではないものの、旧民法制定当時の日本人の平均寿命や精神的な成熟度などを総合考慮したものであるといわれている」と説明しています。なお、当時の日本人の平均寿命は約43歳だったとか。成年の期間は23年程度だったようです。(現在の平均寿命の約半分の長さだったんですね~。人生100年時代ともいわれ始めた昨今です。)
成年年齢の引き下げで何がどう変わる?
民法の成年年齢には、1人で有効な契約ができる年齢という意味と、父母の親権に服さなくなる年齢という意味があります。具体的には、成年年齢の引き下げで、何がどう変わるのでしょうか。
(1)1人で有効な契約ができる
成年年齢引き下げにより、18歳になると親の同意を得ずに、さまざまな契約をすることができるようになります。
例えば、携帯電話の購入や、賃貸借契約の締結、クレジットカードの作成、ローンを組んで車を購入するなどの契約ができるようになります(※契約の際には支払い能力や返済能力を審査されるため、契約できない場合もある)
なお、資産運用については、証券会社ではこれまでも、原則として親権者の同意を得て開設できる未成年口座で投資信託などの取引をすることができました。成年年齢が引き下げられることで、2022年4月以降は口座開設基準を見直すところも出てきています。
NISA(一般NISA、つみたてNISA)についても、現状では加入可能年齢が20歳以上となっていますが、2023年1月以降は18歳以上の人が利用できるようになります。
(2)親権に服さなくなる
親権に服することがなくなることで、自分の意思で自分の住む場所を決めたり、進学や就職などの進路を決めることができるようになります。また、10年有効パスポートを取得したり、試験に合格すれば公認会計士や司法書士、行政書士などの国家資格に基づく職業に就くことも可能です。
女性の結婚可能年齢は、16歳から18歳に引き上げられ、男女とも18歳となります(※2022年4月1日時点で既に16歳以上の女性については、18歳未満でも結婚することが可能)。性別の取扱いの変更審判を受けることも18歳でできるようになります。
(3)年齢制限が20歳のまま維持されるものもある
民法の成年年齢が18歳に引き下げられても、健康面への影響やギャンブル依存症対策の観点から、飲酒や喫煙、公営競技(競輪、競馬、モーターボート競走、オートレース)に関する年齢制限は20歳のまま維持されます。
「18歳成人」で懸念される消費者被害への対策
未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には、民法で定める「未成年者取消権」によって契約を取り消すことができます。未成年者取消権は、未成年者を保護するための法律であり、未成年者の消費者被害を抑止する役目を果たしているのです。
ところが、成年年齢が引き下げられると、18歳、19歳は未成年者取消権を行使することができなくなります(※2022年4月1日以前に18歳、19歳の人が親の同意を得ずに締結した契約については、「民法の一部を改正する法律」の施行後も取り消すことが可能)。
そのため、悪質商法などによる消費者被害の拡大が懸念されています。政府では、小・中・高等学校などでの消費者教育の充実を図るほか、若者に多い消費者被害を救済するための消費者契約法の改正、消費者ホットライン「188(いやや)!」の周知や相談窓口の充実など、消費者被害を拡大させないための環境整備に取り組んでいます。
しかしながら、消費者トラブルに遭わないためには、未成年のうちから契約に関する知識を学んで、ルールを理解したうえで、その契約が必要かどうかを検討する力を身につけることが大切だといえるでしょう。
成年年齢引き下げによって、親世代に求められるものとは?
子どもを持つ親世代としては、新成人たちが消費者トラブルに遭わないよう、契約の重要性や消費者の権利と責任といった「契約」に関する知識やルールなどについて、機会を捉えて積極的に話題提供を行うことが求められるのではないでしょうか。
教育機関では、2022年度からは高等学校の家庭科で、生活設計や家計管理、資産運用、消費者教育などの学習が始まります。成年を迎える前の子どもに向けて、ライフプランニングや資産運用、リスク管理などについて、話し合う機会もこれまで以上に増えるかもしれません。
まとめ
新成人たちが消費者トラブルに遭わないよう、様々な施策が行われていますが、被害にあう新成人たちも出てきてしまうかもしれませんね。
私たち旧成人(?(笑))もそうですが、機会を捉えて、契約の重要性や消費者の権利と責任といった「契約」に関する知識やルールなどについて、改めて見つめなおしていく必要があると思います。そのうえで、新成人や若者にもキチンと正しい情報提供をしていきたいものです。